日本酒づくりには風味や品質を守るための工程「火入れ」があります。
火入れは日本では室町時代の後期くらいからおこなわれていた伝統的な酒づくりの手法です。
では、火入れにはどんな方法があるのでしょうか。
今回は、日本酒の「火入れ」の4つの方法・特徴・メリット・デメリットについてわかりやすくご紹介します。
そもそも日本酒の「火入れ」とは何か?
日本酒の火入れとは、日本酒を65℃前後で加熱する工程のことです。
日本酒を火入れする理由は「品質の安定化」と「火落ち菌を殺菌」するためです。
それぞれの理由についてご紹介します。
❶品質の安定化
品質の安定化とは「糖化」や「発酵」を止めることです。
日本酒は火入れをしないままだと糖化や発酵がどんどんすすむお酒です。
糖化がすすみ過ぎると甘いお酒になります。
逆に発酵がすすみ過ぎるとアルコール度数が高くなり辛口のお酒になります。
甘味や辛味や風味が丁度よいところで止めることができる方法が「火入れ」です。
日本酒は火入れをすることで品質を安定させることができます。
❷火落ち菌の殺菌
火落ち菌の殺菌とは日本酒の見た目や香りや味を悪くする菌の繁殖を止めることです。
火落ち菌とはお酒を劣化させる菌のことです。
日本酒の中で火落ち菌が繫殖すると、透明な日本酒が白く濁り、フルーティな香りが酸っぱいニオイになり、鼻をつくような異臭がするようになります。
もし火落ち菌が繁殖するとその日本酒は飲めません。
日本酒は火入れをすることで火落ち菌を殺菌して繁殖を防ぐことができます。
日本酒でおこなわれる4つの火入れとは?
現在、日本酒では4つの火入れの方法がおこなわれています。
古い順から次の通りです。
1⃣蛇管火入れ
2⃣瓶燗火入れ
3⃣プレートヒーター火入れ
4⃣パストライザー火入れ
次の章から、それぞれの火入れの説明・特徴・メリット・デメリットについてわかりやすくご紹介します。
①蛇管火入れ
蛇管火入れとは、らせん状にグルグル巻にした金属製の管(蛇管)の中に日本酒を入れて、65℃に温めた釜の中に蛇管を沈め、その熱で火入れをする方法のことです。
蛇管火入れの読み方は「じゃかんひいれ」です。
蛇管の釜への出し入れは天井クレーンを使っておこないます。
またグルグル巻きにした蛇管だけを釜に入れ、給酒用の管と排酒用の管は外のタンクとつながっているタイプもあります。
1⃣特徴
蛇管火入れの特徴は古い火入れの方法なので、最近はかなり少なくなってきていることです。
設備にお金をかけられない昔気質の酒蔵などが今でも使っているかもしれません。
2⃣メリット
蛇管火入れのメリットはまとまった量を一度に火入れができることです。
3⃣デメリット
蛇管火入れのデメリットは金属の管の直径が広いので、管の外側は65℃に近く、管の内側はそれより低いことから温度にムラができることです。
また蛇管が長いので細かい温度設定ができません。
➁瓶燗火入れ
瓶燗火入れとは日本酒を瓶詰めにした後に、瓶ごと湯煎する火入れの方法のことです。
瓶燗火入れの読み方は「びんかんひいれ」です。
やり方は最初に大きなプールに65℃に設定したお湯を入れます。
次に日本酒が入った瓶を6本入りのケースに入れ、ケースごとプールに入れます。
日本酒の瓶の中心が65℃に達したらお湯からケースごと引き揚げ、その後に冷水の入ったプールに入れて急激に冷やす方法です。
1⃣特徴
瓶燗火入れの特徴は日本酒が入った瓶を急激に温度を上げて、急激に温度を下げることです。
これによって日本酒の火入れの「品質の安定化」と「火落ち菌の殺菌」を一瞬ででき、しかも熱によるお酒の傷みもほとんどありません。
2⃣メリット
瓶燗火入れのメリットは火入れをしても生酒のようなフレッシュさを損なわないことです。
味わいが保たれて劣化しにくい高品質の日本酒ができあがります。
3⃣デメリット
瓶燗火入れのデメリットはとにかく手間と時間がかかることです。
こちらも昔ながらの方法なので、ほとんど手作業で、蔵人の多い酒蔵でないとできません。
実際に瓶燗火入れをするお酒は価格が高い高級酒だけで、普通酒などはやりません。
➂プレートヒーター火入れ
プレートヒーター火入れとは、3枚の異なる温度のプレートの中に金属の管を通して火入れをする方法です。
やり方は次の通りです。
最初に1番目のプレートに冷たい生原酒が入ります。
次に2番目のプレートに冷たい生原酒が入ると熱水で65度まで急速 に温められます。
最後のプレートに65度に温まった生原酒が入ると火入れ前の冷たい生原酒と「熱交換」されて、一気に35℃くらいまで下げられる仕組みです。
1⃣特徴
プレートヒーター火入れの特徴は「蛇管火入れ」に「熱交換」の仕組みを合わせた火入れの方法ということです。
2⃣メリット
プレートヒーター火入れのメリットは、火入れのすべての作業が機械化され、ほとんど人の手がかからず、自動で酒蔵のすべてのタンクの日本酒を火入れすることができることです。
3⃣デメリット
プレートヒーター火入れのデメリットは、金属の管が長く分解洗浄に手間がかかり、しかもプレートの周りにジグザグに配管されているので固形物が詰まりやすいことです。
④パストライザー火入れ
パストライザー火入れとは、瓶詰めした後の日本酒をベルトコンベアー上を通過させながら高温の温水シャワーにかけて火入れをする方法です。
1⃣特徴
パストライザー火入れの特徴は瓶燗火入れの温水プールを温水シャワーに変えて、さらにベルトコンベヤーを使って自動化したということです。
2⃣メリット
パストライザー火入れのメリットは日本酒の瓶全体にムラなく均一に温水をシャワーリングできることです。
3⃣デメリット
パストライザー火入れのデメリットは1つのシステムでは「温水のみ」または「冷水のみ」しかできないことです。
温水シャワーと冷水シャワーを連続で行うには別々に2台並べる必要があります。
まとめ
今回は、日本酒の「火入れ」の4つの方法・特徴・メリット・デメリットについてご紹介しました。
火入れは日本酒の品質を守り、美味しい日本酒を届けるには必要な工程です。
特に「常温での長期保管」ができるようになったのは火入れの技術が発展したおかげといえます。
火入れ酒の探し方はラベルに「生酒」とかかれている日本酒以外はほとんど火入れ酒です。
ぜひ、生酒との違いを確かめながら飲んでみてください。
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